BtoBベンチャーでの売上減の波。今振り返って反省すべきマーケティングでの4つのポイント

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突如、主力商品の平均成約単価が数分の一に

数年前、私はBtoB向けサービスを提供するベンチャー企業でマーケティング責任者を前任者から引き継ぎました。インサイドセールスもマーケティング部門に内包されており、リード獲得から営業へのアポイント設定までの業務を統括していました。

引き継いでから1ヵ月ほど平和に過ごしていたなか、突如として、主力商品の平均成約単価が数分の一に激減しました。これは完全に外部要因によるものでしたが、その影響は大きかったです。

売上が大幅に落ち込む中で、どうにかして黒字化しようとマーケティング部門全体で動いていたのですが、今思い出すと、その中で、反省すべきムーブがいくつもあったなと思います。

この記事ではその時の反省点を紹介していきたいと思います。

黒字化を目指すにあたっての4つの反省点

反省点① 固定費を下げきれなかった

黒字化を目指す上で、固定費の削減は避けて通れない道だと思います。その中でも以下3つは考慮すべき点があったなと感じてます。

ツール選定の見直し

明らかな嗜好品的なツールは削減していきました。ただ、完全に把握できていなかったこともあり、一部のツールについては「このツールが何をカバーしているのか、よく分からないけど、なんとなく不安だから残しておこう」という曖昧な判断をしてしまいました。今思えば、もっと情報をキャッチアップして、各ツールの必要性や代替可能性を厳密に精査すべきでした。

メンバー採用のタイミング

危機的状況下での採用は、慎重に検討する必要がありました。確かに、後から振り返ると「あのメンバーは立派な戦力になったから、結果オーライだったのかも」と思える場合もあります。しかし、当時の状況を考えると、その採用のタイミングは適切ではなかったかもしれません。

外注・業務委託の適切な管理

外注や業務委託へ依頼している業務については、もう少し深く理解しておくべきでした。例えば、広告やSEOのような専門性の高い領域では、いざという時に自社で応急処置的に対応できるよう、委託している業務の内容をもっと理解しておくべきでした。

もちろん、専門家ほどのクオリティは望めないですが、一時的に自社で対応できる程度の知識は持っておくべきだったと反省しています。

反省点② 費用対効果を突き詰めきれなかった

マーケティングにおいて、費用対効果の追求は永遠のテーマですが、私はこの部分は厳しい方だと思っていました。それでも、反省点は多かったです。

広告を信じすぎた

キャリアを開始したのがWeb広告領域だったこともあり、広告でリード獲得を狙いにいく場面が多々ありました。

前職で「”ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える”という状況にならないように」と教えられていたこともあり、得意領域の広告に対しては、よりシビアに評価を行ってきていたつもりでした。

それでも、得意なパターンに持ち込んでしまうのが人間の性なのか、適切な撤退タイミングで撤退しきれなかった部分があったと思います。

「入口のCPAは安いから…」「リードタイムは半年~1年だから…」「アポイントは取れているし、獲得単価も良くなってきているから…」とズルズルといってしまい、適切な撤退タイミングを逃してしまいました。

これらの判断基準は、平均成約単価が数分の一になる前には通用していたかもしれません。しかし、状況が激変した以上、戦略を根本から見直す必要があったと思います。

BtoBマーケティングにおいて、広告で採算が合うのは「リード獲得→アポイント→成約→成約単価」のそれぞれの要素が絶妙なバランスで成り立っている時がほとんどで、どこか一つでも崩れると、逆ザヤになることが多いと思います。

LTVやリードタイムという言葉で誤魔化していると、状況はさらに悪化してしまう可能性があります。そういう側面を見ると広告はやはり”拡大施策”という位置付けがベターなのかもしれません。

※今後、広告を踏み込む場面があれば、今一度、思い出したい「AdはAddである」「投資は余剰資金で」

本当に今、それやるべき?な認知施策

広報的な認知施策への投資は、慎重に検討すべきでした。確かに、認知は重要ですが、その時の状況下では、直接的に成約につながるような施策に注力すべきでした。

仮に認知施策の効果がすでに見えはじめていて、それを継続するかどうかという判断であれば、継続も選択肢の一つだったかもしれません。しかし、効果が不透明な段階で大きな投資を続けるのは賢明じゃなかったです。

振り返れば、愚直なまでに成約に近いリード獲得に集中すべきだったと思います。認知は大切ですが、状況を見ながら、短期的な成果を優先すべきだったと思います。

反省点③ 売上を上げてどうにかしようとした

固定費を上手く下げられなかったことで、それ以上の売上を上げるという選択肢に視野が狭まっていたと思います。

売上を上げるのは大変です。しかしコストを削減するのは比較的簡単です。その時の状況を鑑みると、売上を上げるのではなく、コストの削減に意識を向けるべきだったのかもしれません。

また、一度作成すれば長期的に効果を発揮するような資産性のあるコンテンツマーケティングへの注力やリード獲得から売上までの再現性のあるプロダクトにリソースを絞ってスリム化すべきだったと思います。

反省点④ 新規事業に希望を持ちすぎた

既存事業の売上が落ち込んだこともあり、その当時、2〜3つの新規事業が立ち上がっていました。マーケティング部門でもそれなりの投資をし、確かに、アポイントはたくさん取れました。

しかし、結果的に基盤となるような売上は上がりませんでした。原因は、アポイントの質が良くない・営業側の成約力が弱い。どちらもあったと思います。

そもそも新規事業なので、鉄板パターンが構築されているわけではないので、アポイントを”消費”しながら、ビジネスモデルを構築していくような状況でした。

今思えば、既存の利益が上がっている事業を基盤にすべきでした。新規事業に手を出す前に、まずは既存事業の立て直しに全力を注ぐべきだったと思います。

反省点からのまとめ

これらの反省点を振り返ると、ほぼすべてが「コスト(投資)」と「売上」に関することだと気づきます。もし、タイムスリップして同じ状況に直面したら、以下のような対策を取ると思います。

  1. 固定費などのコスト削減
    • ツール・外注は最小限に絞り込む
    • 採用は一旦停止する
    • 広告費を大幅に削減し、認知施策への投資も最小限に抑える
  2. スリム化しつつ、重要な領域にリソースを集中
    • メディア運営やホワイトペーパーなど、資産性の高い施策に注力
    • 必要性の高いツールや、直接問い合わせにつながる広告には、限定的にリソースを投入
  3. 再現性のある事業に集中
    • 新規事業の立ち上げは可能な限り控え、現在収益を上げている事業の立て直しに注力

それでもマーケティングは会社の一部

これらの反省点を踏まえて過去に戻っても、正直なところ、黒字化の達成に自信は持てません。

なぜならどこまでいっても、マーケティング部門は会社の一部でしかなく、一部門の努力だけでは、会社全体の問題を解決することはできないからです。

例えば、マーケティング部門で数十〜数百万円のコスト削減に成功しても、他の部門で同じように無駄遣いをしていては意味がありません。また、マーケティング部門でリード数を増やすよりも、営業部門で成約率を上げるほうが大きなインパクトをもたらす可能性もあります。

新規事業についても、マーケティング側からいくら危険信号を出しても、経営者が推進を決定すれば、それに従わざるを得ません。

結局のところ、会社全体が一丸となって問題に取り組む必要があります。上記で挙げた反省点をクリアしても、新たな課題が次々と出てくると思います。それらに対処していくには、会社全体の連携と実行力が不可欠だったと思います。

やっぱり、最後は経営者からの号令が必要です。マーケティング部門だけでなく、会社全体を正しい方向に導く明確なビジョンと、それを実現するための具体的な戦略が求められます。

以上、反省でした。

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この記事を書いた人

イマコネクトメディアの中の人達です。
マーケティング・Web制作・デザインなどを専門にしています。

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